終わりが見えないジャニーズ問題
故・ジャニー喜多川氏による性加害のおぞましさは想像を絶するほど。
逃げ腰のメディア
「ジャニーズ事務所の闇は深い」と、ずっと言われてきました。実際に被害を訴える声はずいぶん昔からありましたが、その都度金欲しさの暴露本的な扱いで、訴えた側が悪く言われたり、訴訟でも訴えの一部は認められたものの、ほとんどのマスコミはスルー。何ごともなかったかのようにジャニタレを使い続けてきました。
そのおかげでジャニーズ事務所は発展し続け、巨大な「ジャニーズ帝国」を築き上げました。
今年3月、イギリス・BBCで特集を組まれたことで尻に火がついた日本のマスコミも、やっと重い腰をあげざるを得なくなり、申し訳程度に反省の弁を口にするけれど、「タレントに罪はない」「報道しない自由」を言い訳にして特に何かを変えるつもりはないようです。
その証拠に、テレビでジャニタレの姿を見ない日はないし、各ワイドショーも市川猿之助ばかりを延々と扱い、ジャニーズの話題を取り上げようとはしません。
ここがいかにも日本的。要は日和見で高を括っているのです。「今までうやむやにできたから、今回もそうしよう」というのが見え見えです。
確かにタレント個人に罪はないかもしれません。でも一般企業ならどうでしょう。「膨大な数に及ぶ児童への性加害を繰り返してきた人物が創業者」という会社との取引きなどありえないはずです。
これはスポーツの世界でロシア選手が国際試合に出られない事態が続いているのと同じで、選手に罪はなくてもロシアという国に属している以上、なんらかの制裁は覚悟しなければなりません。それが嫌なら国を捨てるしかないのです。
なぜジャニーズ事務所はこれほどまで力があるのでしょう?
なぜマスコミはこれほどまでにジャニーズ事務所に忖度するのでしょう?
なぜ戦後最大の性犯罪が長いこと問題視されなかったのでしょう?
この国は性暴力にきちんと向き合うことを避ける国なのでしょうか?
そこにはジャニーズ事務所に絶対的なブランド力を与えることに貢献したポール・ボネこと藤島泰輔氏の存在が大きいものと推察します。
ポール・ボネこと藤島泰輔氏とは?
wikipediaにもあるように、資産家の家に生まれ、初等科から大学まで学習院で学び、上皇明仁殿下のご学友、ポール・ボネというペンネームを持つ小説家である藤島氏。
彼は、故・メリー喜多川氏の夫であり藤島ジュリー景子氏の父親です。メリー氏とは不倫の末に結ばれました。
1962年、ナベプロの系列会社として創業されたジャニーズ事務所。
創業当時金もコネもなかったジャニーズ事務所に資金や人脈の援助をしてきたのが藤島氏であることは周知の事実で、ジャニーズ事務所に巨額な融資をし続けてきた小佐野英子氏と藤島氏は、学習院時代からの知り合いです。
小佐野英子氏は旧伯爵家の出身で徳川家とも縁続き。夫は政商であり裏社会にも通じていると言われている小佐野賢治氏。「記憶にございません」で有名な人物です。
そんな大物がバックについてスポンサーともなれば、長い物に巻かれることを信条とするメディアは尻込みするはずです。噂レベルではありますが、首相経験者が合宿所に通ってたという説もあります。
他にもジャニー氏には「CIAのスパイ説」など、彼の過去にはいくつもの「謎めいた影」がついてまわりました。
その「謎めいた影」たちに守られ、今日まで来てしまったという感じです。
戦後最大の性犯罪が長いこと問題視されなかった理由の一端は、このあたりにあるのではないでしょうか。やはり、得体の知れないものは恐ろしいですからね。
藤島泰輔氏がジャニーズ事務所に与えたブランド力
選挙に勝つにはカバン(金)、看板(知名度)、地盤(人脈)と言われています。
かけだしの小さな芸能事務所が業界でのしあがるために必須とされる要素もまさにこれと同じで、対外的に箔をつけるためには3つのバンが必要です。
資産家である藤島氏はその3つのバンを全て兼ね備えた人でした。彼の幅広い人脈の中には政財界の大物だけでなく、明仁上皇殿下までもがいる。
昭和の時代は今より皇室に対する信頼度が今よりずっと高かったので、藤島氏の存在はジャニーズ事務所に一定以上の社会的な信用とブランド力を与えることに大きく貢献したはずです。
帝国崩壊の兆し
1980年代前半には多くのスターを排出したことでマスコミをコントロールできるほどに力をつけ、”帝国”にまで上り詰めたジャニーズ事務所。しかしどれほど隆盛を極めた帝国も必ず滅びます。これは数々の歴史が証明しています。特に強烈なカリスマ性のある独裁者が去った後の帝国は悲惨です。
ただジャニーズ帝国の綻びは、ジャニー・メリー両氏の死去うんぬんより、もっとそれ以前から始まってたように感じました。SMAPの解散劇です。
SMAP以前のジャニタレは、アイドルにありがちな旬の時期が短かったのに対し、SMAPはバラエティーに活路を広げたことで、世代の垣根を超えた息の長いアイドルとして国民に愛されてきました。彼らの活躍はジャニーズ事務所にも大きな利益をもたらしたはずです。
ところがSMAPの育ての親である飯島氏とメリー喜多川・ジュリー藤島派との確執に端を発した独立問題が表面化したことでメンバーの関係にも綻びが生じ、大きな功績を残してきたはずのSMAPがなぜか謝罪するという、異常な事態を私たちは見せつけられました。
公開処刑と言われたあの謝罪会見です。
当時ジャニー喜多川氏は何をしてた?
タレントを守ることが商売であるはずの芸能事務所が、タレントを矢面に立たせる。あの会見で事務所に貢献したタレントにそんなことをさせる経営者は失格だと世間に知らしめました。「長男」だの「うちの子」だのという言葉が白々しく感じられます。
SMAP騒動の原因が女同士の争いなら「社長であるジャニー喜多川氏がきちんと間に入ればいいだろう」という声が当時も出てました。ところが彼は経営面をメリー・ジュリー親子に任せ、自身はもっぱらタレントの育成とプロデュースが役割…というのは表向き。実のところは自身の欲望の赴くまま、好みの少年発掘作業に明け暮れていたため、経営に関わる諸々の面倒なことにはノータッチでした。
株式を多く保有した代表者かもしれませんが、実は名ばかりの経営者。なので口出ししようにもできなかったのではないでしょうか。それか、興味がなかったかのどちらか。
どちらにせよ、社長としての資質に欠けると言わざるを得ません。
藤島ジュリー景子氏のコメントは失敗でしかない
以上の理由から今回の騒動におけるビデオメッセージの中で、藤島ジュリー景子氏の言う、「あらゆることをジャニー・メリー両氏だけで決めたから私は何も知らない」というのは眉唾物でしかありません。
さらには「ジャニーとメリーの二人体制=ジャニーズ事務所」とも表明してました。
確かにジャニー・メリー両氏は良くも悪くも強烈な個性がありますが、どちらかといえばジャニーズ事務所は藤島家のファミリービジネスであり、その娘であるジュリー氏がノータッチで知らぬ存ぜぬというのは無理がありすぎます。
百歩譲って仮に当時そうであったとしても、今はジュリー氏が代表者なのだから、所属タレントを守るためにも公の場できちんと対話式の会見をする義務があるはずです。
そうでないとジャニーズ事務所に関わった多くのタレントが好奇の目に晒され続けます。
ジャニーズ事務所の弱体化
ジュリー氏の言う「ジャニーとメリーの二人体制=ジャニーズ事務所」だとするなら、両氏がこの世を去れば、同時に両氏を取り巻く諸々も去っていきます。よってジャニーズ事務所のブランド力は確実に落ちます。
それに加え、退所者続出で嵐も活動停止。SMAPや嵐のような国民的なスターも不在。学芸会レベルのタレントを集めたグループで売りだす手法にも飽き飽きしたせいでテレビ離れも一気に進み、ジャニーズ事務所はかつての勢いを失いつつあります。
だからこそ、今回の騒動が起きたのです。「なぜ今になって?」「加害者が生きてる時に言え」という声がありますが、もみ消されるのがわかりきってたからこそ、このタイミングなのです。
かつてなら要所要所に圧力をかけ、報道をコントロールしさえすれば臭いものに蓋ができる。後は知らぬ存ぜぬでとぼけ通せば次第に収まってたはずの騒動に、終わりがまったく見えない。それこそがジャニーズ弱体化の証です。
これを機に、かつてのような強引な手法が通用しなくなった事実、時代が性犯罪を許さない事実、隠蔽・忖度が見透かされている事実を素直に受け入れて、徹底的に膿を出し切る方向に舵を切るしか生き延びる術はないでしょう。
まぁ真摯に解決しようと考えていない事務所には、こんな声は届かないでしょうけど。