「あの人、練習では良いプレーをするのに、試合となるとからっきしダメだよね」
これは私が趣味でやっている、あるスポーツ競技の先輩が、ひとりの後輩に対して漏らした感想です。
試合向きではないというのが先輩の評価ですが、言われてみればなるほど、試合となると凡ミス連発。
初めて彼女の試合を見た時は「ふだん練習ではもっと上手いのに」と驚きました。
ランクをかけた個人戦の場合、対戦相手の実力は自分とどっこい。となると上手い・下手の問題ではなく、試合という非日常の世界で萎縮しない自分を、どうキープできるかが重要だと彼女を見て感じました。
その重要なキーワードが「自意識過剰」。
彼女の場合は特に、負けた後の言動に自意識過剰な性格が表れていると感じました。
人の輪から離れる
試合には必ずクラブから応援の人がやってきます。差し入れやら声援やら、時にはヤジとも思える言葉も聞こえてきますが、多くは「がんばってほしい」との思いで会場に足を運びプレーを見守ります。
一方選手側は試合後に応援の人たちに挨拶をして感想やアドバイスを受けるのが通常のパターンです。
しかし彼女は試合に負けると、その人たちを避けて絶対に近寄ろうとはしません。「近寄らないで」オーラ全開で自分の殻にこもります。
自意識過剰な性格が集中を妨げる
最初はその時だけかと思いましたが毎回そうなので、あるとき理由を聞いたことがあります。
「なんでみんなのところに挨拶に行かないの?」
するとこう答えました。
「あの人たち、きっと私のことを悪く言ってる…」
これは完全に「人からどう思われるか」ばかりを気にしている証拠。
誰だって試合に負けたら合わせる顔がないと思うのは自然なこと。
だとしても気持ちの切り替えがだいじです。頑張った結果がそこまでなら、その結果を受け入れるしかありません。受け入れなければ次には進めないのですから。
これが今の自分の実力なんだ。
言いたいヤツには好きに言わせておけばいい。
少しくらいなにか言われたとしても、別に命まで取られるわけじゃない…
くらいの、いい意味での開き直りが必要。
でも彼女の場合は自意識過剰な性格が災いして、目の前の対戦相手に勝つことより、失敗した後のみんなの反応に気を取られているのです。世間の評価を異常に気にするあまり、「ここ一番」という場所に限って歯車が狂い出すのです。
自意識過剰は直せない?
ではそれを克服する方法はあるのでしょうか?
持って生まれた性格を直すのは難しいけど、無責任に好き勝手な評価をする人の言葉を遠ざけることを意識すればある程度は改善できます。
応援に来る人の中にはヤジとも思える心無い言葉を投げかける人もいます。そういう人は心から応援する気持ちで来てるのではなく、噂話のネタ欲しさに来てるだけです。
そんな人とは距離を置けばいいのですが、彼女はそれができないのです。
できないどころか「自分がいない場で何を言われてるか」を心配し、練習後のランチやお茶会など、どんな場所にでも参加します。参加しないと不安でたまらないのです。
時間とお金の無駄でしかない欠席裁判。そんなところに参加しすぎるから、そこで繰り広げられる会話が自分にも向けられると邪推するのです。
人の口に戸は立てられない
暇を持て余した人は好き放題言うものだと割り切るしかないのですが、自分がどう思われるかばかりを気にする彼女は、せっせと裁判所に足を運んでは他人が裁かれる様を見聞きし、時には他人を裁く側に回り…。
その結果自分が裁かれることに怯えて、肝心なところで結果が出せないという負のスパイラルに陥ります。
そんな不毛な連鎖を断ち切るためには、自分は何もしないくせして無責任に他人を裁くことが大好きな噂好きの輩とはきっぱり距離を置き、雑音をシャットアウトするしかありません。
その上で等身大の自分を知ることだけに意識を向ける。
背伸びしたって背が伸びるわけではないように、どう取り繕ったところで自分は自分でしかありません。
人からどう思われたっていいじゃないですか。どうせ他人の評価なんてアテにはできないのですから。
そんなのに振り回されて消耗するだけ損ですよ。
それよりもまずは自分を正しく知り、今の、あるがままの自分を認めてあげるところから始めましょう。