「義両親との完全同居で毎日が窮屈!ストレスたまりまくり!でも、今さら別居は難しい。」
知人のA子もかつてはそんな悩みを抱える一人でした。風呂も台所も一緒の窮屈な生活を送っていましたが、今は別居に成功。
そこに至るまでにはすったもんだがありましたが、やっと自由を手に入れ、今は毎日笑顔で楽しく生活しています。
深く考えずに同居に踏み切ったものの……
同居を強く希望したのは義両親(特に姑)でした。息子(A子の夫)を通じてこのように持ちかけてきたそうです。
- 一緒に住めば家賃が浮く
- その分子どもたちにかかるお金にゆとりが生まれる
- 仕事を持つA子にとって子育ての援助が必要なはず
- 同居した方が、結果的にあなたたちのためになる
側から見れば、こんなのは同居に持ち込むまでの常套句ですが、A子はその言葉を信じてしまったのです。
「優しそうなご両親だし、だいじょうぶ、きっとうまくいく。時間が経過すれば、実の親子のように仲良くなれる。」
そう考えて始めた同居でしたが、この予想は見事なまでに大外れ。世の中そう甘くはありません。
いくら「義両親側が同居を強く希望した」と言っても義両親所有の土地・建物に入ってしまえば嫁の立場は弱いもの。ありがたがるのは最初だけで、いつしか嫁は「自分たちの家に住まわせてあげてる居候的存在」「タダで使える家政婦」になってしまうのです。
狭い範囲での近すぎる距離感は、トラブルの元
たまに会うのとは違い、実際に暮らしてみないとわからないことが多々あると思い知らされるまでに、そう時間はかかりませんでした。
距離感が近すぎることでお互いのアラが見えて次第に不満はどんどん蓄積し、安易に踏み切った同居を後悔する日々が続きました。
まずは住宅事情。いくら2階を自由に使っていいといっても、元々は1世帯向けに建てられた家では完全なるプライバシーの確保は無理です。
洗濯物の出し入れひとつとっても姑は2階の寝室に当然のように足を踏み入れてきます。子どもが泣き出せば「どうしたの?」と、いちいち覗きにきます。食事のメニューも老夫婦向けの茶色いものばかり。夫婦の会話にも聞き耳たてて、なにかにつけて口出ししてくる過干渉ぶり。
次は家庭内のパワーバランス。舅と息子(A子の夫)は、思い通りにならないと逆上する姑の言いなりになることで家庭の平穏を保ってきたのです。
その結果姑にとっての家族は「コントロールできる便利な存在」になってしまい、常に「自分がいちばん、自分が絶対に正しい」と思い込んでる様子が横柄な態度や言葉の端々に表れていました。
チャンス到来
身内を固めて介護要員の確保に成功し、老後の安心を手に入れたつもりになってる姑はもう強気です。遠慮すればするほど、下手に出れば出るほど、姑の考えや行動はエスカレートしていきました。元気なうちに同居すると衝突しやすいと言われてますが、まさにそれ。
日々の小さな不満が蓄積して次第に笑顔が消え、いつしか別居を考えるようになったA子。
「気の休まる時がない。自分の家という安堵感が得られない。自分たちだけの家庭が欲しい。」
そんな折、姑からこんな提案がありました。
「この家も古いから、建て直した方がいいと思う」
この姑の「いいと思う」というのは実質的な「やれ」という命令と同じ。しかもそのローンはA子夫婦たちの負担。
「狭い土地でこのまま建て直しても、プライバシーの確保には限度がある。ローンを組んでからでは遅い。」
そう考えて、A子夫婦は義両親の家を売りに出し、もう少し広い場所での二世帯住宅を提案しました。姑からの提案をチャンスに変えようとしたのです。
姑が同居を熱望した理由
すると姑は「この場所を離れたくない」と猛反対。何度かの話し合いを重ねた末に呆れ返る事実が判明しました。
そもそも同居したいと熱望したのは姑ですが、その理由は、
- 近所の人たちに内孫を自慢したい
- 新築した家を見せびらかしたい
- 親孝行な息子アピールをしたい
- 息子夫婦と仲良く暮らす姿を見せつけ幸せ家族アピールをしたい
という、姑の見栄から始まったもの。
「冗談じゃない。そんなちっぽけな虚栄心のために、「長男だから」、「家族は助け合って」と、偉そうに御高説を並べてたのか!」
それ以外にも年をとって悲壮感が増したのか、将来に不安を抱いたのも理由のひとつです。夫だけでは頼りない。安心が欲しい。話し相手になってくれる友達もいない。同居すればこれらの問題がすべてクリアできると考えたようです。
自分達の利益しか見えていない義両親に本気で腹を立てたA子は綿密な計画のもと、ある行動に出ました。
「プライバシーが欲しい」という願いから始まった
土地の所有者が義両親である以上、売ることに反対されれば勝手なことはできません。それならせめて、今の土地でも可能な二世帯住宅の可能性があるかを探りました。
玄関や水回りが別なら、念願だったプライバシーの確保ができます。自分だけのキッチンを手に入れれば食事を別にすることもできるし、それぞれの家事を独立させれば家計も別にできます。
そんな提案をしたところ、義両親はまたもや猛反対。
「家計を別にするだなんて、私たちを飢え死にさせるつもり?年金だけでは暮らしていけないから、仕方なくあなたたちを呼んだのに」
当然ながらA子は激怒。
「年金もらえるだけいいじゃない。私たちの代はもらえるかどうかもわからない。いくら夫婦で働いても、建築費のローン、子どもたちの教育費、自分たちの老後の備えで手一杯だというのに、親の生活費まで面倒見ろと?」
あまりにも自分本位な姑の本音に触れ、A子は完全別居を考えるようになりました。
不動産情報を調べ上げ、(義両親抜きの)家族4人で住むのに手頃な物件を探した結果、理想的な物件が見つかりました。
義両親の家から車で約15分。駅に近いため生活面のみならず、子どもたちの通学や習い事、自分の通勤等の利便性も高まる。価格的にも無理なく返済できる範囲内。
問題は、姑の言いなりであるご主人の説得です。
別居に向けての行動開始!
義両親は自分たちの面倒を最後までみることを条件に、土地建物を長男夫婦に相続させようとしてました。とうの昔に家長制度が廃止されてるというのに、「長男は全ての相続する権利がある」と教え込まれ、それを当然のことと疑いもしないA子の夫を説得するのは至難の業。
姑の前では「良い息子」を演じ、A子の前では「良い夫」演じてきたA子のご主人をどう説得したらいいのだろう?
ダイスキな母親の悪口を言えば問題はこじれる。だから姑の悪口や不満を口にしないことだけを心がけました。
しかし内心では「最悪夫の理解が得られなければどこかに部屋を借りよう」と、そんな強い覚悟で別居に向けての計画をスタートさせました。
物件を夫に見せる
ある日の休日、散歩にでも誘うような気軽さでご主人を誘い出し、お目当ての物件に足を運んだA子夫婦と二人の子どもたち。もちろん別居を考えている旨を事前には伝えていません。
なんとその物件をいちばんに気に入ったのはA子の夫でした。子どもたちも「今の家よりずっと良い」「こんな家に住みたい」と、かなりの好感触。
率直な結婚観を伝える
好機到来。A子はすかさず夫に対して別居を希望している正直な気持ち、家族観や結婚観、将来的な展望などを率直に伝えました。
伝えたのは主に以下の内容。
- 「家族だから」が通用するのは結婚するまで
- 結婚は、2人で新たな戸籍をつくること。それが親からの独立を意味する
- 真の親孝行とは自分たちの力で家庭を築き子どもたちを守り抜くこと
- 今どき「嫁にもらう、うちの嫁、嫁ぐ、長男だから、長男の嫁だから、家族だから」という昔ながらの感覚にはついていけない
- 子の相続権は平等、長男だからと全ての財産を相続はできない
いろいろ話をしているうちに、実はA子の夫も「生んで育ててくれたことには感謝してる」とした上で、「長男だから」という親からの押し付けに、実は辟易していたことをポツリと漏らしました。「弟が羨ましかった」とも……。
「次男夫婦は自由に自分たちで住む土地を決めて、買って、建てて、自分達の家庭を築いている。それに対し、生まれた順番が違うだけで自分にはそんな当たり前の自由もない。それは仕方がないことだと、これまで極力考えないようにしてきた」と、初めて心のうちをA子に伝えてきました。
二人の結論は「今はそんな時代じゃない」というところに行き付き、義両親への報告は、A子の夫が担当してくれることになりました。
義両親への報告
二人の気持ちは固まり、自分たちだけの新居購入に向けて動き出したA子夫婦。最後の関門は義両親です。
予想通り当初は逆上したり泣き叫んだりしたものの、息子の固い決意と既成事実の前ではなす術もなく、最後は諦めるしかないと悟ったようです。話して分かり合える相手でなければ実力行使あるのみです。
「これまで口答えひとつしない良い子だったのに」
その言葉の裏には「全て嫁のせい」という怒りと悔しさがありありと感じ取れましたが、A子はどんなにイヤミを言われても「夢にまでみた新生活」を想像するだけでそのイヤミが雑音程度にしか聞こえなくなったと笑ってました。
嫁と姑がうまく付き合うには?
こうして半ば実力行使のような形で完全別居を果たしたわけですが、A子は後にこう言ってました。
「あのまま義両親の元にいたら、土地所有者をひけらかしてさらに恩着せがまくなるのは目に見えていたので、強引にでも別居してよかった」
それで関係が悪化したかといえばそうではなく、表面的には悪くない関係だそう。
要は嫁と姑がうまくやっていくには、まず相手を他人だと認識し、他人としての適度な距離感で付き合うのがいいみたいです。無理に「家族として仲良くする」ではなく「悪い関係でなければそれでOK」くらいのスタンスが、ストレスを溜めないコツだといえます。
なお完全同居の全てが悪いのではありません。同居すべきでないのはこの記事で紹介したようなタイプの姑です。その特徴を以下にまとめました。
- 自分の偏った価値観だけが正しいと思い込んでるタイプ
- 一般常識が通用しないタイプ
- 距離感がつかめない、重たくてしつこいタイプ
- 「あなたのため」と、してあげてる事をやたら強調する毒親タイプ
- 子離れできずに縛り付けるタイプ
- 幼稚で狭量な思考しか持ちえないタイプ
- 身内自慢ばかりするタイプ
- 何かあれば「うちの人間になったんだから!」と言うタイプ
こういうタイプは人として嫌われます。周囲の人が離れていくから息子に依存しようとするのです。不幸にしてあなたの姑がもしこれに合致するなら、同居しても明るい未来は見えません。アウトです。
必要なのは忍耐ではありません。自分の人生を歩むための強い覚悟と行動力だけです!